2022年11月6日(日)、伊那市 市民の森(ますみヶ丘平地林)で、森と歓喜するイベント「森JOY」が開催されました。今年で5回目の開催となりますが、2020年頃から猛威を振るった新型コロナウィルス感染拡大の影響により、森のなかでの完全なリアル開催は3年ぶり(※)。当日は清々しい秋晴れに恵まれて、‟森を感じ、味わい、遊び、語り合う一日”となりました。
※2021年はリアル会場とオンライン会場を設けたハイブリット開催。リアル会場への参加は事前予約制・人数制限ありで実施されました。詳細は昨年のレポートページへ。
森へ集まったのは、関係者も合わせると約800人。毎年恒例の「森のステージ」や「森の遊び場」、「森のグルメ」に加えて、今年はたき火スポットが例年より多く設置されたので、火を中心にいくつもの人の輪ができ、賑わいが生まれました。
会場である市民の森は、その約70%が常緑針葉樹のアカマツからなりますが、針葉樹ながら秋に黄金色に色付くカラマツや、広葉樹もあります。そのため、紅葉の見ごろを迎えていたイベント当日には、美しい色彩とこもれびが会場全体を華やかに演出してくれました。来場者たちはそんな心地よい森のなか、ステージの音楽に酔いしれたり、地域の木材を使ったDIYやたき火を使った体験に熱中したり、キッチンカーや飲食ブースで提供されるグルメを味わったりと、思い思いの時間を過ごしていたようす。たった一日ではありましたが、森の“快”をたっぷり受け取ることができたはずです。
森の一番奥に特設されたステージでは、森JOYの目玉のひとつである「森のコンサート」やトークショーが行われました。
森のコンサートは2部構成で、第一部は、森JOYの初回から出演しているピアニストの平澤真希さんとバリトン歌手の高橋正典さんのパフォーマンス。平澤さんは「耳・目・鼻など五感を使って楽しんでください」と語り、自身が作曲した「水のプレリュード」にはじまり、フォーレ「シシリエンヌ」、シマノフスキ「練習曲作品4-3」を演奏しました。4曲目からは高橋さんもステージへ上がり、フランク「パニス・アンジェリクス」、フォーレ「白い月」、日本を代表する童謡「赤とんぼ」を、その深い声を木々と共鳴させながら歌い上げました。
第二部では、平澤さんと高橋さんがバッハ「主よ、人の望みの喜びよ」、平澤真希「聖なる樹の声」を奏でた後、伊那北高校合唱部と高遠高校合唱部もステージに登場。伊那北高校合唱部は、2022年6月に開催された「日比谷音楽祭」へ平澤さんや高橋さんとともに出演したことが話題になりましたが、森JOYでは高遠高校合唱部も加わった特別な編成で、モーツァルト「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、ホルスト「ジュピター」、ドヴォルザーク「遠き山に日は落ちて」、天山「森のこえ」の4曲を合唱。ときおり落ち葉が舞い散るなか、多くの人々に見守られながら、森のステージのフィナーレを飾るに相応しいパフォーマンスを披露してくれました。
森のステージでは、コンサートの合間にふたつのトークセッションも行われました。ミドリナ実行委員会による「暮らしと森を近づけるアイデアのご紹介」では、ミドリナ実行委員会が作成した「森と暮らしの手引き」をもとに、森が暮らしに浸透するとはどういうことか、間伐材のアロマやたき火など森感度を育むための具体的な方法などについてトークを展開。訪れた人々が森に一歩近づくきっかけとなる、有意義な時間となりました。
もうひとつが、「森に関わる100の仕事をつくる」を目的に立ち上がった官民連携の実践型スクール「伊那谷フォレストカレッジ」の受講生とミドリナ実行委員による、「森を使って、やりたいこと」をテーマに語り合うトークセッションです。受講生のひとりである根岸さんの「森のなかに秘密基地を作りたい」という一言から話が膨らみ、森を使いたい人と所有者のマッチングなど、さまざまなアイデアが楽しいトークのなかから生まれました。
今年の森JOYの大きな特徴は、森のなかにたくさんのたき火スポットが用意されたことです。各スポットでは、この地域、この季節ならではの多様な体験が用意されており、子どもから大人まで火遊びの虜に。なかには土器づくりなどのユニークな体験もあり、子どもたちの好奇心を大いに刺激する機会となりました。
市民の森に常設されている木製のステージ「森の舞台」では、アカマツをはじめとする間伐材を活用した体験がいくつも用意され、多くの子どもやその親たちで賑わいました。ノコギリで木材を切るなど少し難易度の高い体験から、ペレット砂場など幼い子ども向けの体験まで。触る、切る、釘を打つ、組み立てるなど、森から得た材料を使って行うものづくり体験は、子どもたちの創造力を大いに刺激したことでしょう。
完全オンライン開催だった2020年、リアル会場とオンライン会場でのハイブリット開催だった2021年では出店がなかったのですが、今年は3年ぶりに飲食ブースが復活。コロナ禍前と比べたら4軒という限られた店舗数ではありましたが、いずれの店舗も個性とこだわりに溢れるグルメを提供していて、来場者のお腹をしっかりと満たしてくれました。なにより、五感が研ぎ澄まされる森のなかでいただくグルメは格別だったのではないでしょうか。