伊那市役所1Fロビー木質化コンセプトの提案伊那市より「平成30年度地方創生交付金事業ソーシャルフォレストリー都市創造促進事業」における提案依頼を受け、ミドリナ委員会では伊那市役所1階ロビーの木質化に対して、コンセプトデザインの提案を行いました。
伊那市産の木材の中で赤松、唐松(柾目づかい)、栗の3種類に注目し、現代的な感覚で、無垢の良さを若い世代も受け入れやすいデザインを提案しています。
木質化ーミドリナの思い
「多様化を無理なく受け入れていく姿勢が今の時代」ではないかとミドリナは考えています。さまざまな分野の中でそれぞれの立場や考え方、方法を共時的に認め合っていく。そのような心構えや行動にこそ新しい豊かさのあり方があるのではないかと信じながらわたくしたちは活動しています。そのような流れの中で、伊那市よりソーシャルフォレストリー都市創造促進事業の一環として市庁舎スペース木質化のコンセプトデザインのお話をいただきました。
建築の外装や内装は人の暮らしに大きな影響を及ぼします。人の命を守るという基本的な機能はもとより、健全な肉体と精神状態を育くみ、文化的な意識を醸造する大切な基盤になります。さまざまな建材がある中で市庁舎の一部を「木質化」するという試みは、まさに「伊那市=ソーシャルフォレストリー都市」という存在意義を推し進める上でとても有効な方法であるのと同時に、本来市庁舎が果たすべき理想の一つである、市民のみなさまに「くつろぎ」を体験していただく一助にもなると考えました。
わたくしたちは設計と木工に秀でた委員によって専門チームを編成し、市庁舎スペース木質化に対して「ウッドセル(木の細胞)」というアイデアをまとめました。「円」の組み合わせによって椅子やテーブルを生み出します。それらは木の細胞の象徴として、時にはひだまりや池のようでもあり、自然の中に暮らすわたしたちがいつかどこかで目にしたような印象を木工の手段を借りて形作っています。ミドリナのコンセプトを実際の形にしてくださったのは市内「やまとわ」さんのお力です。わたしたちはさまざまな多様性を認めながら、可能な部分において木質化を進めていくお手伝いができることを幸いに感じております。
委員長 柘植伊佐夫
森でくつろぐような時間を市役所でも 例えば市役所での打ち合わせのあとにスモールオフィスとして
例えば市役所で手続きのあとのんびりする場所として 仕事の合間に一息つく場所として
どんな人でも気軽に立ち寄って、気持ちが落ち着く場所を市役所の中に。
テーブルと椅子、雰囲気のあるパーテーションで 市役所の中に森のようにくつろげるスペースを作ります。
木の質感や香りもするそこでの体験は 50 年後市民がもっと伊那市産の木材が身近にある生活を送るきっかけとなるように、
自宅にもこの森のくつろぎを持ち帰りたくなるような場所を目指します。
□ [デザインコンセプト] ウッドセル (木の細胞)
ソーシャルフォレストリーを推進する伊那市の掲げる「伊那市50年の森林(もり)ビジョン」は、森と人が豊かな関係を築いていこうという理念に基づいています。
大切な自然を守り活かすためには、森と人がつながっていこうとする、一人ひとりのちょっとした意識やアクションが大きな成果へ実を結びます。
ミドリナ委員会は今回の1階スペースの木質化に当たって「ウッドセル(木の細胞)」というコンセプトをたてました。
人と自然がつながっていくような、木と一体になるような、森の一部になるような、そんなイメージです。
■ 基本モジュール
「セル」 「ダブルセル」 「トリプルセル」
セルは「細胞」という意味です。ひとつの円を「セル」、二つつながったものを「ダブルセル」、三つつながったものを「トリプルセル」と呼びます。その形に従ってテーブルやチェアを作っていき、トータルの印象が「つながっている世界」に仕立てます。
□ [デザインの特徴 円のつながり
ウッドセルのデザインの特徴は、「円」を一つの細胞に見立てて、それをいくつかつなげることによって
デザインを拡げていることです。
□ 仕切りアイデア
「ツリーパーテーション」
「グリーンサークルカーペット」
市民が集うスペースは、開放的であり、明るい
気持ちになれて、さらにみなさまが一体感を持てることも大切である一方で、プライベートなご家族の語らいや、グループのミーティングなどが成り立つ「仕切り感」も大切です。
ミドリナ委員会は、「開かれていながら仕切られている」という課題を解決するために「木のような形」をした「ツリーパーテーション」と、「丸い緑の芝生のような形」をした「グリーンサークルカーペット」を提案します。
ツリーパーテーションは市民のみなさまに吊り下げ型のオーナメントを作っていただくなど、工夫によって「楽しいイベント効果」を生み出すことができます。
□ 「伊那産木材の使用」
今回のコンセプトを組み立てていく上で、伊那市にどのような樹種があり、それぞれにどのような特徴があるのか、またそれらはどのような製材所で扱われているのか、実際に製作する上でのハードルはどのようなことがあるか、また予算内におさまるだろうか、実現可能性はあるだろうか、など様々な観点を検証いたしました。
その中でもこのコンセプトを遂行する上で大切な要素は「伊那市産の木材を使う」ということだと考えました。ただし「どの木材が伊那市産であるか」という厳密なレギュレーションがないのが現状ではないかと思われますので、この点をどのようにクリアして今回のプロジェクトを実行するのか各方面のお力添えをいただければと希望いたします。
□ 「森にいるような感覚」
ウッドセルコンセプトによる伊那市庁舎1階スペースの木質化の全体像は、「森にいるような感覚」に近づけることが目的です。
ツリーパーテーションは文字どおり森の木々の役割です。その間に置かれているテーブルやベンチ、そしてチェアは、その形からまるで「こもれ陽」や「水たまり」、ちょっとした「池」のような感覚になるでしょう。またグリーンサークルカーペットの緑は、そのまま自然の中にいるような雰囲気を醸し出します。
石造りの庁舎の中で少しホッとできるような空間になると素敵だと思っています。