森林浴で確認された5つの効果
1982年に提唱されて以来、“森林浴”という言葉はすっかり市民権を得ました。「なんとなく良さそう」。誰もがそう思うものの、実際の具体的な効果については長らく研究されずにいました。
その後2000年代に入ると、研究者の出現と計測機器の発達が進み、森林浴効果が次々に実証されていきます。国土の68%に森が広がる日本で、私たちがそれを知らないなんて!使わないなんて! もったいない!!
ストレスは、多くの生活習慣病やガン、精神的な病の要因です。つまり、さまざまな病気の温床となるストレスを上手に手放すことは、健康の秘訣です。
森の中である程度の時間をすごすと、ストレスを感じていることを示すコルチゾールというストレスホルモンが減少します。そう、森の中ではストレスが減るのです。
森林浴効果すべてに大きく関わるのが、このストレスが減る威力です。
わたしたちの身体の中では、その名の通り、ガン細胞を殺してくれるナチュラル・キラー細胞(NK細胞)が作られます。このおかげで、誰でも日々生じるガン細胞が抑えられています。
森の中ですごすことによって、このNK細胞が活性化すること、さらにNK細胞の数が増えることがわかっています。
免疫が活性化され、ガンにまけない身体になるというわけです。
生活習慣病の2トップといえる高血圧に糖尿病。
森の中ですごすと、血圧、血糖値、共に下がることが証明されています。
でも、血圧や血糖値が低い人は困ってしまう‥と思いませんか?驚いたことに、血圧も血糖値も、低すぎる人は下がるのではなく上がる傾向になります。これを生理的調整効果といい、血圧や血糖値が高くても低くても、森が中庸に調整してくれることがわかっています。
わたしたちの身体を自動的に維持し、司ってくれている自律神経。この自律神経が不調になると、困ったことになります。自動ゆえに、自ら意識しても「えいっ!」と不調を解決できないからです。
自律神経の正体は、交感神経(戦闘モード)と副交感神経(休息モード)です。どちらも必要不可欠ですが、今の社会は刺激が多すぎて誰もが交感神経優位となっている状況です。
森の中ですごすと、この交感神経の活動が抑えられ、逆に副交感神経が活性化します。それによって2つの自律神経のバランスがとれるのです。
「えー、気分のもんだい〜!?」
と思うなかれ。気分の問題はとても重要です。PCやスマホというIT機器が仕事や日常の中心に置かれる現代では、気づかないうちに多くのストレスを抱えます。知らぬ間に、こんな気分になっていませんか?
緊張、不安、抑うつ、落ち込み、敵意、怒り、混乱、疲労‥長引くと「うつ状態」へとつながるこれらの気分が、森林浴後には低下して、活気が出ることが証明されています。
では、どうして森林浴はいいの?
森林浴の効果は、五感すべてに届くいろいろな刺激の組み合わせで得られます。
フィトンチッドという香り成分が森林浴効果では有名ですが、香りだけではありません。林内のさまざまな景色、緑、木漏れ日や風や土の感触、葉ずれや鳥たちのさえずり、きのこや木の実の味わい‥。全身に「浴びる」これらの感覚刺激が、わたしたちの身体と心に届きます。
700万年という長い時間の99.99%を自然環境ですごしてきた人間の身体は、自然に対応する力を持っているからだと考えられているのです。
これらの効果は以下の研究者、組織の論文、報告、著書から科学的に実証された結果をまとめたものです。
千葉大学 宮崎良夫教授
東京農業大学 上原巌教授
森林医学研究会 http://forest-medicine.com
森林セラピーソサエティ https://www.fo-society.jp/
「自然」が「人」にもたらす効果の研究は、世界的にもまだ始まったばかりです。Forest Bathingとして「森林浴」は日本から世界へ発信され始めました。これからの研究成果もチェックしてお届けしていきます!